目次
今後どうなる?建設業にいても大丈夫?
こんな疑問に不動産開発業者の視点からお答えします。
この記事でわかること
- 新型コロナウィルスによる建設・不動産業界への影響(2020/7時点)
- 新型コロナウィルスの影響で建設業界で起こること
- アフターコロナの建設業界の景気
これは結構大きなことですので、この先のことを良く考えておいた方がいいです。
さらに7/15には大成建設の現場で17人の新型コロナウィルス感染が発表されました。
この記事では、不動産開発業者の視点から、「新型コロナウィルスが建設・不動産業界に与えている影響」と、「今後の建設業界で予想される影響」について解説していきます。
※コロナの建設業界への影響が気になる方はぜひ参考にしてください。
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こんな方におすすめ
- コロナウィルスが建設業界に与える影響を知りたい
- コロナウィルス収束後も建設業にいて大丈夫なのか知りたい
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コロナショックは建設・不動産業界にどんな影響を与えているのか
新型コロナウィルスの感染拡大による影響は、建設・不動産業界にも及んでいることが、東京商工リサーチの調査で明らかになっています。
東京商工リサーチの7月アンケートでは、「すでに影響が出ている」の回答は、宿泊、旅行、飲食業界が属するサービス業他で82.1%、製造、卸売、小売、運輸の80%超えと比較すると、建設業は51.6%とコロナウィルスの影響は少なく見えます。
しかし、「今後出る可能性」については41.9%と他産業の約2倍~4倍の回答で全産業トップ。
これは建設業が経済市況から業績反映までタイムラグが発生する産業であることに加えて、コロナの収束時期を見通せないこと・企業の建設投資抑制の可能性もあることから、先行き不透明感を表した結果と言えます。
その影響は各社の決算発表に出てきており、次期(21年3月期)業績予想は約6割が「未定」として開示していません。
また、コロナウィルスの影響は不動産業では大企業で顕在化しており、91.01%が「すでに影響が出ている」と回答しています。
一部では入居テナントの撤退や賃料の減額要請が発生していることに加え、「建設コストが高止まりする一方で可処分所得の低下が見込まるため、地方を中心に賃貸物件の新築が難しくなる」(不動産業者)との声もあり、影響は長期化する可能性を残している。
不動産業と関わりの深い建設業では、不動産業の景気で業績が左右されやすく、今後その影響を受ける可能性も否定できません。
つまり、現時点では影響が目に見える形で顕在化しているのは氷山の一角で、水面下には潜在的なコロナショックを抱えていると言えます。
リーマンショック時も、翌年以降の景気が最低を記録したように、コロナショックの影響もタイムラグをもって表面化してくることを十分に想定しておく必要がありそうです。
コロナショックの影響で建設業界に何が起こるのか
コロナウィルスの影響で建設業界で予想されるのは以下の4つです。
コロナウィルスの影響で予想されること
- 工事中断及び製品未納による工程遅延
- 工期延長を認められない現場の工期逼迫
- 下請けの費用負担
- 下請け・小規模事業者のリストラや倒産・廃業
基本的に影響は下請け・小規模事業者になるほど大きくなります。
なぜなら建設業界は未だに重層下請構造から脱却できていないからです。
その影響の流れをひとつずつ説明します。
工事中断及び製品未納による工程遅延
工事の中断は当然工程の遅延を招きます。
これは単純に中断した期間の分だけ遅延するわけではなく、作業員が確保できなくなることで、更なる工程遅延のリスクもはらんでいます。
なぜなら現場が止まる場合、出来高で生活をする職人は他の現場へ流れるから可能性があるからです。
各工種の施工手順が絡む建設工事では、多くの職種がタイムリーに現場に入れないと工程はスムーズに流れません。
他の現場へ職人が流れると、そのまま戻ってこれないケースや、希望の工事時期に現場へ入れないなどの不具合も生じやすくなります。
つまり、一度現場を止めると工程遅延のリスクは大きくなるのです。
また、すでに各現場で影響が出ているのが、中国製部品を使用した製品の未納問題。
特に多いのは陶器類や石材関係です。
これも単純に工場が稼動し製品が生産されればすぐに解決する問題ではなく、メーカーも順番に製品を納品することから、納期が確定できず工事工程を組むことが容易でなくなります。
現にゼネコン社員からも「納期未定製品が多く現時点では工程の遅延日数を発注者には明言できない。」との話を聞いています。
このことから、コロナウィルスの影響は工程に大きく影響してきます。
工期延長を認められない現場は工程が逼迫
国土交通省の通達の中には、以下のような明記があります。
「受注者は、発注者に工期延長を請求できるとともに、増加する費用については、発注者と受注者が協議して決める」
これにより、ゼネコンは発注者に対して工期の延長と費用の負担を申し出ることができますが、現実的に発注者が全額費用負担することは考えにくいです。
それは、この内容は責任を負いたくない政府の「受注者任せ」の意思を示していて、結局これまでの力関係と慣習で工期と費用が決まってしまうからです。
特に一般消費者への商品提供を行うマンションの建設工事では、工期の遅延は入居者の入居時期へ直接影響します。
その場合、入居者の入居遅延費用・心理的負担を持つのは発注者になりますが、それを発注者側で飲むほどディベロッパーは簡単ではありません。
延長する場合の費用はゼネコンと折半、または工期の延長を認めないなどの可能性も出てきます。
ゼネコン側もその腹の底を知っているため、安易に工期延長は申し出ません。
発注者の機嫌を損ねると今後の受注にも関わるからです。
つまり、「コロナウィルスへの対応として工事の中断は認めるものの、工期は変更無し。」とする現場も多く、ただでさえ厳しい工期の現場はさらに工期が逼迫することになります。
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工事中断の費用は下請負担
工事を中断した場合の費用はその多くが下請の負担になります。
その理由は建設業が未だに「重層下請構造」のままだからです。
国交省の通達のとおり、工事中断の費用負担は"発注者と受注者の協議による"とされています。
実はこの「協議」とは名ばかりで、その中身は「発注者と受注者の力関係」が全てです。
先にも説明したとおり、発注者の機嫌を損ねると受注者は次の受注に関わります。
これまではオリンピック特需で受注者側の立場が強く、買い手の市場でしたが、特需も終わりこの先はそうも行きません。
特にゼネコンのキャッシュフローは決して良好とは言えず、500現場の中止を決めた清水建設でもキャッシュはわずか1500億。
月の売上が平均約1400億ですから、わずか1ヶ月売上が滞ることでキャッシュが底をつく可能性もあるわけです。
ですから、ゼネコンも発注者との関係性を安易に崩したくありません。
※これはゼネコンの財務状況が悪いわけではなく、特需による事業拡大の建設業の特徴としてのキャッシュ比率が低いことを表しています。
その背景から、ゼネコンも下請・孫請けへの支払は容易ではなく、下請・孫請けへの支払については明確にしていないことが多いです。
つまり、国が受注者任せの方針を出したことにより、これまで通り「重層下請構造の力関係」で費用負担が決まるため、工事中断による費用負担は下請に偏ることになります。
下請・小規模事業者のリストラや倒産・廃業
力関係で費用負担が決まる限り、下請・小規模事業者ではリストラや倒産・廃業のリスクが高まります。
それは先述したように、最終的なしわ寄せは下請に来るからです。
スーパーゼネコンでも資金繰りに苦労をするため、中堅・中小ゼネコンではさらに厳しい状況にあると見て良いと思います。
キャッシュに余裕のないゼネコンは、コロナの影響による費用を負担しきれないため、工事は止めないもしくは未払いという状況になります。
支払を受けられない下請業者は、キャッシュが入らずさらに下請の孫請けへの支払が止まる。
孫請けや小規模事業者でキャッシュに余裕のある事業者は多くはないでしょう。
結果、固定支出の大きい人件費の削減(リストラ)が行われたり、最終的には倒産・廃業も有り得ます。
アフターコロナで建設業界の景気はどうなる?
結論から言うと、建設業の景気は後退すると考えられます。
理由は2つ
- オリンピック特需の終了
- コロナショックによる業界のキャッシュフロー悪化
それぞれを説明していきます。
オリンピック特需の終了
これまではオリンピック特需や盛んな開発案件により景気はよく、各社が過去最高益を出すなど盛り上がりを見せていました。
人材の不足から、建設業の有効求人倍率と給与水準も右肩上がりで建設業はバブルとも言える好景気。
業界全体としても完成在庫もおよそ2~3年ほどの余力はあり、今年のオリンピックによる景気の動向により、特需が継続するか否かという局面でした。
そのため、建設業界の景気のピークは22年~23年、もしくはそれ以降も続くとまで見られていました。
しかし、コロナショックの先行き不透明感から発注は調整局面に入ります。
つまりこれで建設特需は終了し、今後緩やかに景気は後退することが考えられます。
コロナショックよる業界全体のキャッシュフロー悪化
コロナショックの影響で、工事中断や未払いの発生が起きると、業界全体としてキャッシュフローが悪化し、資金繰りの厳しくなるゼネコンも増えます。
それはつまり、下請や中堅・小規模事業者の経営悪化を意味します。
短期的には、未払いや費用負担によって財務状況が悪化し倒産する事業者も増えるでしょう。
先にも記載した通り、オリンピックの建設特需が終了し、積極的な投資を行う企業は減ってゼネコンの国内の仕事は減っていきます。
ゼネコンの仕事が減れば、キャッシュが下請まで回らず、景気は次第に後退してくでしょう。
これまでバブルとも言えた建設業界ですが、この先はその景気の動向に注視しておく必要があるように思います。
建設業でのキャリアをどう考えるか
景気が後退していく産業の中で、自身のキャリアをどうするのか。
これはこの機会にしっかりと考えておく必要があります。
なぜなら、自分の生活に直結するからです。
おそらく今後給料は下がる企業が増えるでしょう。
建設バブルははじけました。
今までのようなキャリアと給与が見合わない額の年収でいられることは望みが薄い。
景気が後退する建設業界で高い年収を得るには、建設技術者としての市場価値を高める必要があります。
今まで通りの働き方ではなく、新たな技術と働き方で柔軟に対応することが建設技術者には求められるようになるでしょう。
その環境下で建設業界に身を置いてキャリアを積んでいくか、先を見越して新たなキャリアを積むかは自分次第です。
コロナで起きることを把握し、自身のキャリアへ落とし込む作業を早いうちに行うことをおすすめします。
コロナショックの建設業界への影響|まとめ
この記事の内容を要約します。
この記事の要約
- コロナショックで起きることは4つ
- 工程遅延
- 工程の逼迫
- 力関係による費用負担
- 下請・小規模事業者の倒産・廃業
- コロナで建設の景気後退は早まった
- 建設業従事者は自身のキャリアを考えるべき時
コロナの影響で建設従事者の方々も自身のキャリアについて考えることが迫られています。
念のため私が過去に利用したキャリアアドバイザーをご紹介します。
今一度どのような人生を歩むのか、再考してみても良いかもしれません。
この記事のライター
よこ
- 元職人・元ゼネコン所長を経て、現在財閥系ディベロッパー技術主任
- 建設業界・不動産業界での経験は約11年
有料職業紹介(許可番号:13-ユ-316606)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社ゼネラルリンクキャリアが運営しています。